養育費について
目次
養育費の決め方
離婚する際に未成年の子どもがいる場合に、子どもの扶養料として養育費を請求できます。養育費の金額、支払い方法等については、まずは当事者で話し合って決めます。今後の教育費や生活費にかかる費用を考慮して、十分に話し合いをする必要があります。
養育費について合意できた場合には、約束違反がないように、合意内容を公正証書にすることをお勧めします。公正証書にした場合には、将来支払いを滞った場合に、裁判を経ることなく強制執行が可能ですので、養育費の支払い確保のために有効といえます。
当事者間の話合いによって決まらない場合には、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停を提起することができます。離婚については合意していて、養育費のみが争いなっている場合もご利用いただけます。
調停で養育費の金額について定まった場合には、調停調書に記載しますので、裁判を経ることなく強制執行が可能になります。
調停で話合いがまとまらない場合には、審判手続きに移行し、裁判官が当事者の主張や双方の収入に関する資料を検討した上で養育費について決定します。
養育費の算定基準
養育費について話し合いによって解決できない場合には、客観的な算定基準をもとに養育費の金額を決めます。
養育費の計算は、両親の収入、子供の数、子供の年齢等を考慮し、複雑な計算式を使って算定しますが、家庭裁判所の実務では、簡易迅速な計算のために、「養育費の簡易算定表」が使われます。
成人年齢が令和4年4月から18歳に引き下げられていますが、養育費の終期については、実務上20歳まで、または大学に進む場合には事情によって22歳までと定めるケースが多いです。
子一人の表(子0~14歳)
子一人の表(子15歳以上)
子2人の表(第1子及び第2子0~14歳)
子2人の表(第1子15歳以上、第2子0~14歳)
子2人の表(第1子及び第2子15歳以上)
子3人の表(第1子、第2子及び第3子0~14歳)
子3人の表(第1子15歳以上、第2子及び第3子0~14歳)
子3人の表(第1子及び第2子15歳以上、第3子0~14歳)
子3人の表(第1子、第2子及び第3子15歳以上)
出典 家庭裁判所ホームページ
具体例
算定表の見方は、子供を養育していない側が「義務者」、子供を養育している側が「権利者」になります。
例えば、子供が二人(10歳、16歳)いる事例では、「子2人の表 第1子15歳以上、第2子0~14歳」の算定表に基づいて養育費を計算することになります。
夫の税込み収入が650万円、妻の税込み収入が300万円(どちらも給与収入)であり、妻が子2人と同居しているケースでは、縦軸の650万円と、横軸の300万円が交わる8万円~10万円が夫から妻に支払われるべき養育費になります。
離婚後の養育費の請求
離婚する時に養育費を決めていなかったとしても、離婚後に養育費を請求することができます。養育費について話し合いで解決できない場合には、相手方が住む家庭裁判所に養育費の支払いを求める調停申し立てをすることができます。
過去の養育費については、①明確に内容証明や調停で請求の意思を明確にした段階から認められるという立場と②請求の意思を明確にしてなくても過去分を遡って請求できるという立場がありますので、過去の養育費を請求したい方は、詳しくは弁護士にご相談ください。
養育費の増額(減額)請求
養育費を一旦決めた場合でも、収入の変化や子供の教育環境の変化等によって、養育費の増額請求又は減額請求が認められることがあります。
子供が私立の学校に入学する等、養育費を決めた時点では予想していなかった教育費の増大があった場合には、親の社会的地位、学歴、経済事情等から私立学校に要する費用の増額請求が認められることがあります。
また、病気等で職を失った場合、義務者が再婚して扶養家族が増えた場合、権利者の収入が増額した場合、権利者が再婚し再婚相手と子供が養子縁組を結んだ場合等には、養育費の減額が認められることがあります。
当事者が話し合いで解決できない場合には、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に養育費増額、又は減額請求の調停を提起することになります。
養育費を取り決めたが支払ってもらえない場合
公正証書や調停で養育費を取り決めたが、支払いが滞ってしまったという場合には、早めに弁護士にご相談ください。裁判所に履行勧告を出してもらう方法や、給与の差し押さえ等、養育費をきちんと支払ってもらえるための方法が多くございます。
養育費の請求は、子供が健やかに育つための権利でもありますので、できる限りの手段を尽くし、支払いを確保しましょう。