年金分割について
目次
離婚する際には、年金分割を忘れずに
婚姻期間中、ご自身の収入の方が配偶者よりも少なかった場合、年金分割の手続をとることで、婚姻期間中の保険料納付記録の最大で2分の1までの分与を受けられる可能性があります。
年金分割を受けることで、将来の年金が増額しますので、離婚の際に年金分割の手続を行うことが重要ですが、制度の認知度が低いせいか、手続きをきちんと行っているケースは少ないといえます。
下記の表のとおり、令和2年度は、離婚件数19万2062人に対し、年金分割を行った件数は2万9781件ですので、離婚する夫婦の6~7人に一人しか年金分割の手続をしていないといえます。
離婚等に伴う保険料納付記録分割件数の推移
総数 | 離婚分割(合意分割) | 3号分割のみ | 離婚件数(参考) | |
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平成30年度 | 28,793 | 21,841 | 6,952 | 212,782 |
令和元年度 | 29,391 | 21,485 | 7,906 | 213,349 |
令和2年度 | 29,781 | 20,695 | 9,086 | 192,062 |
出典 令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
次に年金分割(合意分割)でどのくらい年金が増えているかについては、下記の表のとおり、直近3年間の推移を見ると、分割を受けた者は、分割を受ける前と比べて平均して月に3万円ほど年金が増えています。
離婚分割 受給権者の分割改定前後の平均年金月額等の推移
第1号改定者(分割をした者) | 第2号改定者(分割を受けた者) | |||||||
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件数(人) | 平均年金月額(円) | 件数(人) | 平均年金月額(円) | |||||
改定前 | 改定後 | 変動差 | 改定前 | 改定後 | 変動差 | |||
平成30年度 | 2,862 | 143,208 | 112,272 | △30,937 | 2,546 | 51,436 | 82,701 | 31,265 |
令和元年度 | 2,982 | 143,162 | 114,025 | △29,137 | 2,481 | 53,405 | 84,056 | 30,651 |
令和2年度 | 2,310 | 145,061 | 115,963 | △29,098 | 2,070 | 51,585 | 82,358 | 30,774 |
出典 令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
年金分割によりどのくらい年金が増えるかは、婚姻期間と配偶者の給与にもよりますが、年金分割により増える年金が月々3万円とし、65歳から25年受給すると仮定すると、900万円の差額が生じます。女性の平均寿命が90歳近くであることを考えると、年金受給期間が長期にのぼることが予想されますので、
年金分割による利益は決して小さいものではありません
。
離婚時に年金分割について定めなかった方も、手続期間内に忘れずに年金分割の手続きを行うことが重要といえます。
年金分割の条件
年金分割の対象となるのは、厚生年金の保険料納付記録です。したがって、配偶者が公務員又は会社員の場合には年金分割の対象になりますが、個人事業主等、国民年金に加入している場合には年金分割の対象になりません。
また年金分割は期限があり、離婚から原則として2年以内と定められていますので、必ず期限内に手続を行いましょう。なお、離婚後2年以内に調停又は審判を申し立てていて、手続中に2年経過した場合には、調停成立又は審判確定後1か月後以内に手続を行えばよい等の例外が認められています。
年金分割の方法
3号分割制度
第3号被保険者とは、厚生年金に加入している被用者の配偶者で、年収が130万円未満の者(専業主婦等)を指します。
平成20年4月1日以降の婚姻中に、第3号被保険者期間がある場合、離婚から2年以内に年金事務所に請求すれば、相手と交わした合意書面や調停調書がなくても年金分割が受けられます。
合意分割制度
第3号被保険者に該当しない場合、又は第3号被保険者に該当するが、平成20年4月以前の分についても年金分割を求める場合には、合意分割の手続が必要になります。
年金の合意分割をする場合に、まずは、年金事務所又は共済組合等の実施機関から年金分割のための情報通知書を取得します。
そして、夫婦双方が年金分割についての合意内容を記載した書面を、年金事務所の窓口に持参し、所定の手続を行うことで年金分割を受けることができます。
年金分割についての合意内容を公正証書にしておけば、夫婦が揃って年金事務所に手続に行くことなく、年金分割を受ける側が公正証書を年金事務所に提出することで手続が可能です。
当事者間で年金分割の合意ができなかった場合には、家庭裁判所に調停を提起することで、調停調書に年金分割について定めることができます。この場合も、夫婦が揃って年金事務所に手続に行くことなく、年金分割を受ける側が調停調書等を年金事務所に提出することで手続が可能です。
調停や審判等の裁判所の運用としては、年金分割の請求があった場合に、分割割合を0.5(50%)とする実務が定着しているため、多くの方が裁判所を通じた手続きで年金分割が認められています。
離婚時に年金分割について定めなかった場合も、離婚から2年以内に家庭裁判所に年金分割を求める調停又は審判を申し立てることで、年金分割について定めることができます。
当事務所では、年金分割について、公正証書作成のサポートや、調停、審判のサポートを行っていますので、年金分割をお考えの方はお問い合わせください。